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★★★風をつかまえた少年
14歳だったぼくはたったひとりで風力発電をつくった
ウィリアム・カムクワンバ

池上彰が紹介した本

飢饉で中学を中退したマラウイの少年が風車を手作りして自宅に電気を引いた話。
NPO法人かなんかが寄付した図書室の物理学入門を読んで成し遂げたわけだが、母国語ではなく英語で書いてあるわけだから、凄い。
読んでいると、両親が立派。
特にお父さんが働き者で腕っ節も強く、それでいて寛大で教育の大切さを理解している。
たった一人の息子が飢饉のさなかに一日本読んで何かを作っていても許容するのは、なかなか出来ない。
学校を辞めさせたことに負い目を持っていたらしいが、優しい人なのだと思う。若い頃は、商売をしていて大酒のみで喧嘩ぱやかったわしいけど。
でも、主人公も三ヶ月ぐらいで風車を完成させているんですよね。
電気の大切さって、節電の日本でもまだまだ分かっていないって思いました。
単に明るくなるだけではなく、潅漑施設や揚水ポンプに使えるので、綺麗な水と農業水が簡単に手に入りますものね。
近所で子供が死ななくなったとか、農作物が年に2回とれるようになったとか、地域の生活が一気に向上した。
最も、そこまでには時間がかかったけど、家庭の配電や変圧器、バッテリーは、物理学入門だけで少年がやったのだから凄い。
元々、ラジオの修理とかを経験だけで従兄弟とやっていたということだから、基礎は独学であったのだと思う。そこが理論づけられて一気に華開いたんだろうな。
発電機の仕組みは簡単というレビューがよくあるけど、呪術が息づく世界で科学的な思考を持って、母国語でない本を読んで、ナットもペンチもない中でってのが凄いです。
しかし、マラウイの教育の遅れというのは残念。飢饉や政権交代のせいで、あんなに中学退学者や死者が出ていると分かっているのに、この少年は風車が世間に認められてからも、年齢が高いことを理由に中々学校に戻れなかった。
この子を支援したマラウイで教科書をいくつも書いている博士も貧乏のために大学に行ったのは30過ぎだ。
その一方で、マラウイの中学は日本の高校レベルな気がする。やっていることが難しいよ。